ダブルスファンの雑記

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2023年 東レ パン パシフィックオープン 観戦記⑤

2023年9月29日 東レ パン パシフィックオープン ダブルス準決勝

U.エイケリ / I.ニール 6-4 4-6 11-9 N.メリカ マルティネス / E. ペレス

 

イングロット・ニールはテニス界では珍しいエストニアの選手です。9月25日付のダブルスランキングで49位に位置しています。これは彼女のキャリアハイのランキングであり、男女単複を通じて唯一トップ100にいるエストニア国籍の選手ということになります。予選決勝を観に行った日に練習しているのを目撃し、その時から気になっていた選手なのですが、試合のプレーもとても良かったです。身長168cmと小柄でそれほどパワーがあるわけではないのですが、ボールにラケットを合わせる技術が高く、ボレーとリターンがとても巧いと思いました(本人曰く一番得意なショットはスマッシュらしいですが)。サーブはスライス系が主体でスピードはそれほどないのですが、24日の練習では相手をしていたマロゾバとスクーフスが“遅いけど取りにくい”と彼女のサーブについて話していたので、見た目以上に効果的なショットのようです。特筆すべきはそのプレースタイルで女子には珍しいサーブ&ボレーを多用します。

⇧試合開始の2時間ほど前、パートナーのエイケリと練習しているニール

 

彼女のパートナーのエイケリはノルウェーの選手。昨年の全仏オープンのミックスダブルスでクールホフ/柴原のペアが優勝しましたが、その時の決勝の相手がこの選手でした(エイケリのパートナーはブリーゲンでした)。ニールとは先月から組み始めており、先週のグアダラハラでベスト8に進出しています。

 

彼女達の対戦相手はメリカ マルティネス / ペレス組。こちらは昨シーズンからずっと組んでいるペアで昨年の東レで準優勝しています。今季はツアー優勝がないものの、全仏のベスト4が戦績としては光ります。二人とも今大会はシングルスの予選にも出場していますが、いずれも予選で敗退しています。(ペレスの予選決勝の模様は↓)

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コイントス。この試合は主審もエイケリと同じノルウェーの方でした。その主審がエイケリを“アイケリ”に近い発音をしていたので、その方が正しいのだと思います。

⇧トスに勝ったエイケリ / ニールがレシーブを選びました。レフティのペレスのサーブで試合が始まります。

 

第1セットは第3ゲームのメリカ マルティネスのサーブをディサイディングポイントでエイケリ / ニールがブレークに成功。このワンブレークを守り切って6-4で第1セットをとります。

⇧1巡目の第3ゲームのサーブをブレークされたメリカ マルティネス。2巡目の第7ゲームではコートの端に立ち位置を変えてワイドサーブを打つ場面がありました。何か変化を加える必要があると判断したのでしょう。このゲームはキープします。

⇧コートチェンジの時のエイケリ / ニール。なぜかニールは座らずに立ってることが多かったです。

⇧サービスダッシュするニール

 

第2セットもエイケリ / ニールが先に第5ゲームのペレスのサーブをブレークし、続く第6ゲームのエイケリのサーブをキープし4-2とリードを広げます。しかし、百戦錬磨のメリカ マルティネス / ペレスはここで崩れませんでした。第8ゲームのニールのサービスゲームのファーストポイントがダブルフォルトとなると、そこからたたみ掛けてこのゲームをブレークに成功。さらに第10ゲームのエイケリのサーブもブレークし、逆転でこのセットを6-4で取ります。

⇧第2セットもペレスのサーブでスタートします。第1セットとは逆のエンドから打つことになりますが、このペアはペレスがサーブの方がキープしやすいということなのだと思います。エイケリ / ニールも同様にエイケリのサーブからスタートしていました。

⇧4人のネットプレー

⇧第2セット以降、メリカ マルティネスはサーブ&ボレーを多用していました。

⇧第8ゲームのニールのサービスゲームで0-40のピンチを迎えます。エイケリ / ニールはここでオーストラリアンフォーメーションを使いました。1ポイントは凌いだ二人でしたが、次のポイントでペレスの好リターンを受けてブレークを返されます。

 

マッチタイブレークはメリカ マルティネス/ ペレスが2ポイント目のエイケリのサーブをブレーク。その後エイケリ / ニールが追いつき、またメリカ マルティネス/ ペレスがブレークし、またまたエイケリ / ニールが追いつくという一進一退の攻防が続きます。そのまま9-8でメリカ マルティネス / ペレスにマッチポイントが訪れます。エイケリ / ニールはここを凌ぐと、逆転して10-9でマッチポイントを迎えます。ここでニールがリターンエースを決め、エイケリ / ニールの勝利が決まりました。

⇧マッチタイブレークもペレスのサーブからスタート。セットブレークの時間を20秒以上残して二人はコートに戻っていました。

⇧メリカのファーストボレー

⇧先にマッチポイントを迎えたメリカ マルティネス / ペレスでしたが…。

⇧勝利を決めた瞬間のエイケリ / ニール

⇧試合後の握手

⇧観客の拍手に応える二人

⇧オンコートインタビュー

 

試合後のインタビューで「盾は大きい方と小さい方とどっちがいいですか?」と問われ、エイケリが“もちろん大きい方ね”と答えていましたが、その言葉通り翌日の決勝戦では穂積 / 二宮を破り、「大きい方の盾」を獲得することができました。この決勝戦も相手のマッチポイントからの逆転勝利でした。

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ちなみに今大会でエイケリ / ニールのペアは1回戦以外は全てセンターコートでプレーしています。同じく決勝に進出した穂積 / 二宮は決勝戦が初めてのセンターコートだったので、後から考えるとどっちが地元のペアなんだかわからないコート割りでした。

 

記事の冒頭にも述べましたが特にニールは面白い選手だと思います。今回のWTA500の優勝は現時点で彼女が獲得した最大のタイトルです。キャリアハイのランキングも更新し、恐らく30番台後半ぐらいまであがると見込まれます。

 

2回戦後のオンコートインタビューではしゃぶしゃぶや焼き肉やラーメンを食べたり、渋谷や東京タワーに行ったりと日本を楽しんだことを語っていました。また是非来日して欲しいと思います。