カレーニョブスタとフェレール
表題の二人、共にスペインの先輩と後輩だけあってプレースタイルがよく似ています。二人とも一撃で相手を仕留めるような武器はありませんが、フォアもバックも安定していて脚が速くでよくボールを拾います。
そのカレーニョブスタの先の錦織戦は本当に素晴らしい試合でした。錦織がファイナルセットで先にブレークした時点では完全に錦織に流れが来ていましたが、そこからカレーニョブスタが錦織のサービングフォーザマッチをブレークしたのは見事でした。何かこの日のカレーニョブスタは強かった頃のフェレールを思い出させるような、そんな強さでした。
それだけに、最後のタイブレークでカレーニョブスタのチャレンジが成功したにも関わらず錦織のポイントとなったあの場面は残念でした。審判の判断は正しかったと思います。残念だったのはその判定に対しカレーニョブスタが怒りを爆発させ、そのままズルズルと負けてしまったことです。もちろんこの間の錦織のプレーも素晴らしかったですが、何かカレーニョブスタの集中力が落ちてしまったような気がしました。余程怒りが収まらなかったのか、カレーニョブスタは退場の際にも主審に暴言を吐いていました(口の形を見る限り"Asshole”と叫んでいたように見えました)。
いささかフェレールびいきの意見かもしれませんが、同じ場面でフェレールだったら崩れなかったのではないかという気が私はしてしまうのです。
フェレールの試合で今でも印象的なのは2015年全豪オープン3回戦の対シモン戦です。
共に長いラリーが得意な選手同士の試合は3時間半にわたる死闘の末にフェレールが勝利しました。勝利を決めた直後、フェレールは脚を引きずってネットまで握手をしに歩いていきました。どうやら試合中から痛めていたようなのですが、そんな様子は試合中には微塵も見せなかったため、多くの人がここで初めてフェレールが負傷していたことに気付いたのではないかと思います。試合中はタフガイを演じ続けていたフェレールのメンタルの強さを感じた試合でした。
もちろん格下の選手相手に3時間半の試合を戦ったこの時のフェレールと、格上の選手相手に5時間試合をして後一歩のところで負けた今回のカレーニョブスタをそのまま比較するのはフェアではありません。しかし、今回のカレーニョブスタは、試合後の言動を見てもあの審判の判定を自分の負けた理由にしてしまったような気がするのです。そこに、故障を言い訳にせずむしろそれをひた隠して戦い抜いたフェレールとのメンタルタフネスの差を感じてしまうのです。故障ではなく、審判の判定という自分のせいではない対外的要因だったからこそ、余計に難しさはあるのかもしれませんが、あの判定があった後でもカレーニョブスタのサーブが2本ある優位があった以上、カレーニョブスタはタフガイに成りきらなくてはいけない場面だったと思います。
カレーニョブスタの今回のプレーは素晴らしいものでした。今回のようなプレーが続けられて、そこにフェレールのようなタフさが加われば、フェレールを超える活躍をする日も来るのかもしれません。そうなれば今年で引退してしまう母国の先輩に対して最大の花向けになるのでしょう。