ダブルスファンの雑記

プロテニスの主にダブルスについて書くブログです

2022年 東レ パン パシフィックオープン  観戦記⑤

2022年9月18日 予選決勝

西郷里奈 2-6 6-3 6-0 村松千裕

コイントス。左が西郷、右が村松

奈良くるみのシングルス引退試合の直後に始まったのがこの試合。会場は奈良の試合で最大の盛り上がりを迎えてしまった後だったうえ、日本人同士の対戦となってしまったためどっちかを凄く応援するわけにもいかず、会場の温度は正直低めでした。ただ、個人的には見て良かったと思う試合でした。

 

私は両選手ともこの試合で初めて観たのですが、割と早い段階で両者がどんなことがしたいのか良くわかる試合でした。この試合の争点はとてもシンプルで、村松が打つループボールからの展開に西郷がどう対処するかということでした。村松は深いループボールを打って相手にもループボールを打たせ、そのボールを高い打点からのフォアで強打するというパターンを得意としています。

 

西郷も事前にそのことはわかっていた様子で極力ループボールに対してループボールで応じず、フラット系の低いボールで返球しようとしていました。ただ、ループボールを処理するときにライジングではなく下がって処理するため、ひとたびループボールを打たれてしまうと村松にとって脅威となるような返球は出来ていなかったように思います。そのため西郷は、そもそも村松にループボールを打たせないようにするため、低くて速いフラット系のショットで村松を左右に揺さぶっていく戦術を用いており、これには一定の効果はあった様子でした。ただやはりリスクの高いプレーなので要所でミスが出てしまい、第1セットは1時間弱と内容的には競ったにも関わらずスコアの上では6-2と差がつきました。

 

村松はサーブもボレーもグリップが少し厚め。サーブのグリップが厚いのはレフティーなのでスピンサーブに対するニードが少ないこともあるのでしょう。実際、サーブはファーストもセカンドもスライス系でした。

多用するショットではなかったですが、スライスも上手でした。

村松の攻撃の起点となるループボール

相手がループボールで応じてきたらすかさず前に入って、高い打点で強打します。

村松(手前)のループボールにポジションを下げさせられる西郷(奥)

第2セットは西郷のサーブから始まりますが、いきなり村松にブレークを許します。こなま一方的な展開になるかと思われましたが、西郷の非凡な才が見られたのはここからでした。

 

第2セット中盤から第1セットではミスになっていた西郷のフラット系のショットが次第にコートに収まるようになってきます。こうなると村松は思うようにボールを持ち上げられなくなり、逆に西郷との低いボールの打ち合いにつきあ合わされる形になっていきます。こうなると西郷のストロークにはどんどんリズムが出てきて気づけば1-3から5ゲーム連取で逆転してセカンドセットをものにします。

第2セットは西郷のサーブから。ウェアを着替えて臨みます。

西郷のサービング・フォー・ザ・セット。この時点で試合時間は2時間に達しています。

第3セットに入り村松は懸命にループボールで西郷の勢いを止めようと試みますが、西郷はループボールが少しでも浅くなればフォアに回り込んで叩いてプレッシャーをかけ、試合の終盤には村松からループボールのミスを引き出せるようになっていました。結局最終セットは完全に西郷が主導権を取った形で試合終了となりました。

浅く入ったループボールを叩く西郷

試合終了

オンコートインタビュー

人生初だというサインボールの打ち込み。サインをするのにも結構時間がかかっていたので、もしかしたら楷書で書いていたのかもしれません

西郷の見事な1セットダウンの1ブレークダウンからの逆転勝ちでした。劣勢の場面でも自分を信じてフラット系のショットで攻撃をし続けたメンタルの強さと相手のショットに順応していける適応力の高さを感じました。

 

敗れてしまった村松も良いテニスだったと思いますが、ループボールからの展開を封じられたことで攻め手を失ってしまったことが痛かったです。彼女に何かもうひとつ武器があればまた違った結果になっていたのかもしれません。

thedigestweb.com

 

WTAツアーのデビュー戦でいきなり本戦進出を決めた西郷は、この翌日行われた本戦1回戦でペトラ・マルティッチにストレートで敗れています。村松との試合が2時間越えでしたし、予選2試合からの3日連続で試合になってしまったのでかなり疲れもあったのではないかと思います。主催者側ももう少し日程を配慮してくれても良かったのではないかと思うのですが…。21歳とまだまだこれからの選手ですので、今後に期待したいと思います。

news.tennis365.net