2022年 東レパンパシフィックオープン 観戦記④
2022年9月18日 シングルス予選決勝
今大会で引退を表明している奈良の試合は間違いなくこの日最大の注目試合でした。お客さんの多くも奈良の試合目当てで来ていた様子で、第1試合の終盤からかなりお客さんが入ってきていた印象です。
第1セットは完全に奈良の圧勝ムードでした。相手のシニコバは強打したときの威力こそありますが、ラリー戦の中では奈良の守備を崩すことができず、逆に少しでも甘いショットがあれば奈良の方が先に仕掛けてポイントを取るという形になりました。なかなか主導権の取れないシニコバは「さらに強打する」という作戦しか取れず、そうなったことでますますアンフォースドエラーが増え、ほとんど危なげない形で奈良が第1セットをものにしました。
第1セットが終わった時点で誰もが昨日のメリカ=マルティネス戦と同じ楽勝を予想したと思います。しかし、テニスの難しさはここからでした。第2セットの第1ゲームでシニコバはこの試合で初めてのキープに成功します。するとここから少し力が抜けたのか開き直ったのかわかりませんが、第1セットエラーの多かったフォアの強打が次第にコートに収まるようになってきはじめ、第2ゲームの奈良のサーブをブレークしてしまったのです。こうなると第1セットでは観られた奈良から展開するパターンはほぼ無くなり、「シニコバが決めるか」「シニコバがミスるまで奈良が粘り切れるか」のどちらかでポイントが決していくような状態になっていきました。この後第3,4,5ゲームにかけてブレーク合戦となり、2-3で迎えた奈良のサービスゲームでこのセット初のサービスキープで3-3とし、スコア、ブレーク数ともに追いつきます。しかし、この後も奈良はサービスキープに苦しみます。第8ゲームでサーブをまたブレークされ、直後の第9ゲームでなんとかブレークバックするものの、第12ゲームのサーブも落としてしまい5-7でこのセットを落とします。
第3セットは完全にシニコバのペースでした。これまで全て強打だったシニコバは第2セットを取ったことで奈良とストローク戦になっても大丈夫だという自信を深めた様子で、つなぐボールと強打するボールにメリハリをつけてきました。逆に奈良の方は第2セットで試合をまとめ切るために全エネルギーを使ってしまった分、プレーの質を上げてきたシニコバに対処することが出来なくなってしまった印象です。シニコバに次々とウィナーを決められてしまう上に、自身のアンフォースドエラーはどんどん増えてしまい、流れを取り戻せないまま0-6でファイナルセットを落として試合終了となりました。
勝ったシニコバはこれが初のWTA本戦です。1回戦で第6シードのプリスコバと対戦になります。
敗れた奈良は残念ながらシングルスはこれで最後の試合となりました。土居美咲とのダブルスに期待したいと思います。土居 / 奈良は1回戦でケニン / サムスノワと対戦になります。
Kurumi Nara waves goodbye on home soil 🇯🇵
— wta (@WTA) 2022年9月18日
Congratulations on a wonderful singles career, Kurumi! 💜#TorayPPO pic.twitter.com/sEac9lTKbC