ダブルスファンの雑記

プロテニスの主にダブルスについて書くブログです

2022年 東レパンパシフィックオープン 観戦記②

2022年9月17日 シングルス予選1回戦

フェルナンダ・コントレラス=ゴメス 6-3 6-7(3) 6-1 華谷和生

 

テニスの試合を生観戦することの楽しみの一つが、これまで全く知らなかった選手の素晴らしいプレーを観る機会に恵まれるということにあります。どうしてもテレビ観戦だったり、サブスクでの視聴だと知ってる選手、観たい選手の試合だけを観てしまいますが、生観戦の場合はその時やっている試合を観るしかないので、必然的に知らない選手の試合を観る機会が増えます。その意味で、この試合は会場まで足を運んで良かったなと思う試合でした。

 

センターコートで行われていた奈良の試合の後に、ショーコートで行われていたこの試合を観に行きました。私がコートについた時点でコントレラス=ゴメスからみて6-3 2-3という場面から試合を観はじめました。

 

このコントレラス=ゴメスという選手は大変おもしろい選手です。メキシコの24歳の選手で、現在の世界ランキングは177位。キャリアハイは157位という選手です。見た目は細いのですが凄く筋肉質な印象の選手で、フィジカルの強そうな感じが漂っています。特徴的なのは女子では珍しい片手打ちのバックハンドということ。ニュートラルなラリーでは主にスライスを使い、ライジングでボールに合わせて打つときにはフラット、ベースライン後方に下げさせられたときにはヘビースピンというふうに打ち分けていました。プレーを観る限り一番得意なのはフォアハンドで、バックハンドは展開を作るためのショットという気がします。

スライスを多用するコントレラス=ゴメス

ライジングで打つときはフラット系も使います

ベースライン後方に下げられたときはヘビースピン

チャンスボールを叩くコントレラス=ゴメス。恐らくフォアが一番得意なのだと思います。バックでつないで最後は回り込みのフォアで仕留めるパターンが多かったです。

プレースタイルも独特ですが、キャリアも独特な選手です。↓のWTAの記事によると大学でロボット工学を専攻し、ボール拾いをしてくれるロボットを作ったのだそう。さらに小説の執筆にも挑戦しているらしく、非常に多才な方のようです。

www.wtatennis.com

 

一方、日本の華谷も私は初めて観る選手だったのですが、いいプレーをしていました。日本の女子選手に多いライジングでのタイミングの早さはあまり無いのですが、ボールを引き付けて重いボールを打つタイプの選手のようです。フットワークも良くてコートカバーリングが良い印象を受けました。JTAのホームページによるとコーチをしているのはスライスの名手で知られた茶圓鉄也さんのようです。

www.jta-tennis.or.jp

華谷のニュートラルなポジションはベースラインのやや後方。ここから力強いボールを打っていきます。

バックハンドも力強いです

プレーの中で効果的だったのが走らされたところからのフォアの切り返し。ウィナーにはなりませんが相手コートに深く突き刺さり相手の連続攻撃を許しません。

試合は第2セット4-4での華谷サーブで0-30という大ピンチが訪れますがここを逆転でキープ。続く第10ゲームで今度はコントレラス=ゴメスのサーブで0-40と華谷のトリプルセットポイントがきますが、2本のサービスエースを含む3ポイント連取でコントレラス=ゴメスが追いついき、結局キープして5-5。続く第11、12ゲームも両者サービスキープでタイブレークに突入します。タイブレークでは華谷が芸術的なバックのトップスピンロブを見せて先にミニブレークに成功。続くポイントでコントレラス=ゴメスにイージーなフォアのエラーが出て5-2と先に華谷がリードを広げます。そのあと一つブレークを返されましたが、リードを守り切った華谷が7-3でタイブレークを取り切り試合はファイナルセットへともつれこみます。

第9ゲーム、0-30のピンチをしのぎガッツポーズを作る華谷。私の聞き間違えでなければ「カモン!」「アレ!」「バモス!」と3ヵ国語の掛け声を出していたと思います。

コントレラス=ゴメスのサーブ。ファーストサーブは160~170km/hぐらい出てました。この写真はフラット系のサーブですが、セカンドサーブではスピン系のサーブも打っていました。

第10ゲーム、トリプルセットポイントを凌いでサービスキープし雄叫びをあげるコントレラス=ゴメス

第2セットを落としたコントレラス=ゴメスは着替えのウェアを持ってトイレットブレークへ向かいます

第2セットを取った華谷。セット間で主審と何か話をしていました。

トイレットブレークから帰ってきたコントレラス=ゴメス。ファイナルセットはピンクのズボンに履き替えてきました。プレー中はサングラスをしてたのでわかりませんでしたが、可愛いらしい顔立ちです。

第3セットはコントレラス=ゴメスのサーブからスタート。第2、第3ゲームがいずれもデュースになりますが、両者サービスキープで2-1。ここまでは拮抗していたのですが、第4ゲームの華谷サービスゲームをコントレラス=ゴメスがブレークしたことで流れは一気にコントレラス=ゴメスに傾きました。コントレラス=ゴメスは第6ゲームも華谷のサーブをブレークし、結局6-1でファイナルセットを取り切って2時間半に及んだ試合に決着をつけました。

渾身のダウンザラインがサイドアウトし、思わずく崩れ落ちる華谷

片手バックのジャックナイフを打つコントレラス=ゴメス

コントレラス=ゴメスのループボール

ファイナルセットの途中から日が落ち始め、コートに照明がつきました。コントレラス=ゴメスもサングラスを途中から外してプレーしていました。

2ブレークアップ4-1とリードし、ガッツポーズを作るコントレラス=ゴメス。

試合終了

ファイナルセットに関して言えば少しフィジカルの差が出たように思います。華谷に少し疲れが出てきてアンフォースドエラーが増えた印象でした。コントレラス=ゴメスのバックの低くて短いスライスとフォアの深くて弾むドライブ系のショットの細かいリズムの変化が、徐々に徐々に華谷の体力を奪っていったような気がします。

負けてしまった華谷ですが、良い意味で日本人らしくないテニスがおもしろかったです。ストローカーの宿命ですがネットプレーにはややぎこちなささがあるので、ここが改善されると今回のような長い試合をもっと楽に戦えるのではないかと思いました。

 

勝ったコントレラス=ゴメスも特徴的なテニスでまた是非見たいと思うプレーでした。ただちょっと気になったのは、技巧派っぽいテニスをしながらもドロップショットが凄く下手なところです(笑)。この試合だけたまたま上手くいかなかっただけなのかもしれませんが、フォアのドロップショットはドロップショットを打つモーションに入るのが早すぎるので、相手に打つのがバレてしまっていたように思います。こういうところがどう変わっていくかも今後彼女のテニスを観る楽しみの一つになりそうです。

コートを去るコントレラス=ゴメス。立ち去り際、ベンチ近くにいたファンに「ありがとう」と日本語で言っていました。

コントレラス=ゴメスは予選2回戦で岡村恭子を破り本戦進出を決めています。本戦1回戦ではソフィア・ケニンと対戦になります。またダブルスでも本戦出場が決まり、同じくシングルスの予選を勝ち抜いたデスピナ・パパミハイルとのペアでアダット=マイア・ジャンのペアと対戦します。