ダブルスファンの雑記

プロテニスの主にダブルスについて書くブログです

T.ヒューイ / J.P.スミス vs マクラクラン勉 /A.ヨーランソン

オドラム・ブラウン・ バンクーバー・オープン ダブルス決勝

マクラクラン / ヨーランソン  6-7 7-6 11-9  ヒューイ / スミス 

 

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↑こちらで試合がストリーミング配信されています。

 

シーズン半ばでクラーセンとのペアを解消したマクラクラン。新しいパートナーは先のデビスカップで対戦したスウェーデンのヨーランソンです(以前の記事では“ゴランソン”と表記しましたが、発音的にはテニスマガジンの表記“ヨーランソン”が近いみたいですので改めたいと思います)。ヨーランソンのプレーは私もこのとき初めてみたのですが、派手さはないものの堅実なプレーをする選手という印象でした。デ杯での対戦の時は特にリターンが良かったと思います。

doublesgeek.hatenablog.com

 

マクラクランと組むのを知ったときには、マクラクランの弱点であるリターンを補えるので良いペアリングではないかと思っていました。しかし、いざ蓋を開けてみると11大会出場してうち6大会で初戦敗退といういまひとつな戦績。これは早々に解散ではないかと思っていた矢先に、チームとして12大会目先週のシカゴチャレンジャーで優勝し、今週のバンクーバーでのチャレンジャーでも決勝に勝ち上がってきました。

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意外だったのがリターンのサイドです。本来はマクラクランはデュースサイド、ヨーランソンがアドサイドの選手なのですが、シカゴでもバンクーバーでもヨーランソンがデュースサイド、マクラクランがアドサイドに入っていました。何かの記事でマクラクランはリターンのサイドをデュースサイドにしてから良くなったということが書いてあった気がするので、マクラクランがアドサイドというのは驚きました。いつからこの形になったのかはわからないのですが、これで結果が出ているのでこのチームにはこの形が合っているのでしょう。私の推測ですが、リターンの良いヨーランソンをデュースサイドにすることでリターンゲームの最初のポイントの取得率を上げたい狙いがあるのではないかと思います。

 

対するヒューイ / スミスはともに現在のランキングは100番台ですが、かつてはツアーレベルでプレーしていた実力者です。フィリピンのヒューイは2016年のウインブルドンでミルニー(現在の錦織のコーチ)とのペアでベスト4に進出し、同年のマスターズカップにも出場しています。オーストラリアのスミスは2019年の全豪オープンのミックスダブルスで準優勝の実績があります。ヒューイもスミスも左利きの選手で、どちらも普段はアドサイドでプレーすることが多いのですが、この試合はヒューイがデュースサイドに入っていました。どういうわけだか会場にはヒューイのファンがたくさんいたようで、応援はヒューイ / スミスのペアのほうが多かった気がします。

 

ヨーランソン / マクラクランは相対的にサーブの弱いヒューイのサービスゲームを明らかに狙っていたと思われます。事実、第1セットでは5-5で迎えたヒューイのサービスゲームで0-40のチャンスを作りました。しかし、ヒューイもスミスもそこは実力者です。簡単にブレークはさせません。ヒューイのサーブはスピードこそ乏しいものの特にアドサイドでは配球が良かったと思いますし、前衛スミスは甘く入ったリターンは逃さずポーチしてプレッシャーをかけてきました。結局、ヨーランソン/マクラクランはこのゲームも含めて都合5回あったブレークチャンス(全てヒューイのサービスゲーム)をものに出来ず、逆にタイブレークを落として第1セットを奪われます。

 

第2セットは5-5で迎えたヨーランソンのサービスゲーム落とし、サービス力のあるスミスのサービング・フォー・ザ・マッチを迎えてしてしまうという大ピンチに陥ります。ここでも30-0と先行され、ヨーランソン/マクラクランは敗退まであと2ポイントという崖っぷちにおいこまれますが、ここから怒涛の4ポイント連取で追いつくと第2セットもタイブレークに入ります。タイブレークも先に2ブレークを許し0-3と先行される苦しい展開でしたが、ここから5ポイント連取ですぐに追いつけたのが良かったです。その後は一進一退の攻防の末9-7でこのタイブレークをものにします。

 

迎えたマッチタイブレークも、ヨーランソン/マクラクランは相手ペアに先行を許してしまいます。しかし、8-7で迎えたヒューイのサーブで、恐らく決め打ちだったと思われるマクラクランのストレートリターンがヒューイ/スミスの逆を突く形となって決まりブレークで並ぶことに成功。その後互いにキープを重ねて迎えた9-10でのスミスのサーブで、スミスが割とイージーなスマッシュをミスしてしまい試合終了となりました。

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これでヨーランソン/マクラクランは2週続けての優勝。チャレンジャーとはいえダブルスで連続優勝というのは難しいですから素晴らしいことだと思います。

 

ヨーランソンはバックのリターンが良かったですね。丁寧に逆クロスに流すのも、引っ張ってストレートに強打するのも両方上手かったです。マクラクランは相変わらずサーブがいいですね。彼のサービスゲームは見ていて本当に安定感があります(事実この試合ではマクラクランのサーブではブレークポイントさえありませんでした)。

 

課題となるのはマクラクランのリターン、特にバックのリターンではないかと思います。この試合では相手が二人ともレフティーだったのでそこは差し引かなくてはなりませんが、やはりマクラクランのバック側にサーブが入るとそれほどいいリターンがいかない印象は残りました。フォアに回り込んでリターンする場面もありましたが、そのときはポジションがかなり下がった位置から打つ形になっていたので、これもどこまで相手にプレッシャーになっていたかは微妙なところです。

 

この試合に関してはスコア的にも内容的にも薄氷の勝利でした。もちろんこういう厳しい試合を勝ち切ったのは素晴らしいことなのですが、欲を言えば5度のブレークポイントがあった第1セットは取りたかったです。このセットを取っていればここまでもつれずに試合は終わっていたかもしれません。こういうところでしっかりブレークするためにもマクラクランのリターン力を上げたいところです。

 

今後USオープンを経て楽天ジャパンオープンにも出場すると思われます。そこでのプレーも大変楽しみな二人です。

 

~追記~

このペアについてライターの内田暁さんの書いた記事を見つけました。マクラクランとヨーランソンは大学の先輩、後輩で学生時代にも組んでいたんですね。

thedigestweb.com