ダブルスファンの雑記

プロテニスの主にダブルスについて書くブログです

ダブルスのスペシャリストは”二流の群れ”か?

物議をかもしそうな記事がネットに上がっています。ニュージーランド在住のスポーツコラムニスト、Mark Reasonが書いた↓の記事です。タイトルを訳すと『なぜナダルは私の気を狂わせるか、なぜマイケル・ビーナスの論点はズレているか』ということでいいのではないかと思います。

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私の英語力の問題なのか、この記事自体の構成の問題なのか定かではないのですが、正直この記事の前半と後半のつながりが良くわかりませんでした。

 

とりあえず、前半のナダルについてのところでは、彼がポイント間で明らかに規定以上の時間を使っているにもかかわらずタイム・バイオレーションが課されないことについて書いています。Reasonはこのことについては問題視する立場で書いているようです。

 

後半はマイケル・ビーナスがニック・キリオスのことを“嫌な奴”、”成熟度は10歳児ののレベル”と批判したことについて書いています。

 

記事の要旨について語る前に、この出来事自体について説明すると、先の全豪オープンの準々決勝でキリオスとビーナスはダブルスで対戦しています。この時にはキリオス組が勝ったのですが、試合後のニュージーランドのテレビのインタビューでビーナスはキリオスの試合中の態度を前述のように批判しました。

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日本でも記事になりましたが、この試合中、キリオスの打ったボールがスタンドにいた男の子に直撃し、キリオスがラケットをプレゼントして謝罪するという出来事がありました。ビーナスはこれにも苦言を呈していて、どうしてこの行為でキリオスがいい奴ということになるのかわからない、という主旨のコメントをしています。

tennisclassic.jp

ちょっと話が逸れますが、この件は個人的には私もビーナスと同意見です。上の記事から実際にその動画を観ることができるのですが、通常あそこまでボールコートに叩きつけるときにはベースライン方向に叩きつける(そうすれば距離があるので客席に飛び込んでも球威が落ちて危険ではなくなるため)ものなのです。今回のキリオスは思いっきりコートサイドに向けて打っているので、はっきり言って危険なショットだった思います。

 

さて、話をReasonの記事に戻すと、Reasonは記事の中でビーナスをはじめ、ダブルスのスペシャリストのことを痛烈に批判しています。以下に原文を引用すると(日本語訳は私の訳です)

No one has ever turned up to a Grand Slam to watch Venus play. But he is still getting paid big money thanks to Nadal and Federer to play second-rate tennis.

ー誰がビーナスがプレーするのを観にグランドスラムに来るだろうか。しかし、彼は大金を手にすることができる。フェデラーナダルが二流のテニスのためにプレーしてくれるからだ。ー

 

Then Kyrgios and Thanasi Kokkinakis team up, turn tennis into an entertaining circus and Venus doesn’t like it. Nor does he like it when the Special Ks cut a swathe through the doubles tournament and show up the so-called specialists as a bunch of second rate impostors.

ーキリオスとタナシ・コキナキスが組んだことで、テニスは人々を魅了するサーカスになった。ビーナスはそれが気にいらない。もしくはキリオス達がダブルストーナメントで注目を集め、いわゆるスペシャリストと言われている選手たちが二流の俗物の群れだと示したことが気に入らないのだ。ー

 

要するにReasonが言いたいのはビーナスのような選手がテニスでお金を稼げるのは、キリオスのような集客力のある選手とそのパフォーマンスのおかげなのだから、それを(ビーナス側が)非難するのはおかしい、ということなのだと思います。

 

これはダブルスファンとしては看過し難い発言です。去年の全豪オープンでコキナキス / キリオスを下したのはクールホフ/ クボトという彼の言うところの二流の選手のペアです。この1大会の成績をもってダブルスのスペシャリストたちを二流呼ばわりとはコラムニストとしてリサーチが足りないですし、きわめて了見が狭いと言えます。

 

ダブルスの集客力がシングルスに劣るというのは大筋で認めざるを得ません。しかし、集客が出来ない=二流というのであれば、あらゆるマイナースポーツの否定につながります。これもいかがなものかという論立てです。

 

選手の中でもビーナスと同じニュージーランドのダニエルはTwitterでReasonへの非難を口にしています。

 

ニュージーランドはビーナス、ダニエルのほか、スィタックもいますし、かつてはマクラクランもニュージーランド国籍でした。多数のダブルススペシャリストを排出している国からこういう記事が出てしまうというのは大変残念です。