ダブルスファンの雑記

プロテニスの主にダブルスについて書くブログです

スタッツに見るメクティッチ / パビッチの強さ

全豪オープンではメクティッチ / パビッチミルマン / モンテイロのペアを下し、準々決勝に進出しました。

 

ここまでのこのペアのスタッツを見て驚いたのですが、メクティッチ / パビッチはここまでの3試合でブレークポイントを1ポイントも握られていません。これは2ndサーブのポイント獲得率が高いからなのだと思います。1回戦68%、2回戦73%、3回戦92%という素晴らしい数字です。(参考までに同じく3回戦をストレートで勝利したエルベール / マウの3回戦での2ndサーブのポイント獲得率は50%です。)どうしてこんなにこの数字が良いのかはわかりませんが、このペアの好調さが表れているように思います。

 

次の準々決勝ではとうとつエルベール / マウと対戦になります。エルベール / マウも流石にスタッツはこのペアほど良くないですが、ここまで3試合を全てストレートで勝ち上がってきました。どんな試合になるのか(ライブで見られないのですが)非常に楽しみです。

全豪オープン2021 男子ダブルス ~前半戦を終えて~

オーストラリアンオープンの前半戦が終わりました。男子ダブルスは降雨の関係でコキナキス / キリオス vs クールホフ / クボトの2回戦が終了していませんが、それ以外は16強のペアが出揃った形になります。

 

上位8シードは第1シードのカバル / ファラと第3シードのグラノイェルス / セバリョスが敗れるという波乱がありましたが、他は概ね順当に勝ち上がってきています。一方で8シード以下はドディグ / ポラセクピアース / ビーナス以外は一掃された形になりました。どちらもツアー最終戦に出たことがあるような実力ペアですから、他の下位シードとは一線を画すようなペアです。そういう意味ではシード勢の中でも実力と実績のある層が残ったと言える結果かもしれません。

 

トップハーフではアレバロ / ミドルコープボレッリ / ゴンサレスダニエル / オズワルドがノーシードから勝ち上がってきていますが、これらのペアも安定した実績のペアですから、勝ち上がってきたことにそれほど意外性は無い気がします。

 

意外だったのはオーストラリア勢が割と残っていることです。エースのピアースはもちろんですが、エブデン / スミスダックワース / ポールマンスミルマン/モンテイロとオーストラリア人のいるペアが16強中4組も残っています。もしキリオス / コキナキスのペアが勝てばさらにもう1組増え、少なくとも1組はベスト8に入ることが確定します(エブデン組とコキナキス組が次に当たることになるためです)。ただ、これだけ地元勢が頑張っているのにメルボルンはロックダウンになってしまったのが気の毒です。

jp.reuters.com

 

さてここからの展望ですが、トップハーフはカバル / ファラ、グラノイェルス / セバリョスがいなくなったことで、マレー / ソアレスラム / ソールズベリーの一騎打ちの様相を呈したきたように思います。爆発力のありそうなモンロー/ ティアフォーがハマった場合、このペアに割って入ってくるということは考えられるかもしれませんが、やはり安定しているのはこの2ペアだと思います。その上で前哨戦の結果を考慮すると上がって来るのはマレー / ソアレスではないかと思います。

 

ボトムハーフは上位勢に前述のオーストラリア勢が挑む形になっています。ただ、上位勢の牙城を崩すのは難しいのではないかと思います。争点になるのはどのペアがメクティッチ / パビッチを止めるかでしょう。前哨戦からの連勝で今季は10戦全勝です。順当に行けば準々決勝であたるエルベール / マウが連勝ストッパーの最有力でしょう。オリンピックのメダルを狙うペア同士でもありますから、非常に熾烈な争いになりそうな気がします。大会前の予想ではメクティッチ / パビッチの勝ち上がりを予想していましたが、開幕してここまでの勝ち上がりを見ると、相方不在とはいえクラウィーツをストレートで下してきたエルベール / マウの強さは光る気がします。私は今回はエルベール / マウがメクティッチ / パビッチを止めるのではないかと予想しています。

 

ただ、エルベール / マウに物凄く全豪を取りたい意欲があるかと言われるとそうでもない気が正直します。オリンピックを考えるとメクティッチ / パビッチは牽制しておきたいでしょうが、それ以降はあんまり重視してないんではないかと勝手に思っています。やっぱりピークはオリンピックに合わせてくるのではないでしょうか。エルベール / マウがベスト4に勝ち上がった場合、恐らく反対側から上がってくるであろうドディグ / ポラセクの方が決勝に上がってくる可能性は高い気がします。

 

総じて私の予想は以下の通りになります。

  • 優勝:マレー / ソアレス
  • 準優勝:ドディグ / ポラセク
  • ベスト4:ラム / ソールズベリー、エルベール / マウ

 

 例年当たったことの無い予想について長々と書いてしまいました。今年は当たりますように。

M.ダニエル / P.オズワルド vs D.コプファー / T.サングレン

2021年 全豪オープン 男子ダブルス2回戦

ダニエル / オズワルド 7-6(4) 6-7(3) 6-2   コブファー / サングレン

 

ダニエル / オズワルドのペアは以前このプログでも取り上げたハイインパクトアスリートの活動で獲得賞金の寄付を公言している選手です。二人ともダブルス専門の選手なのでシングルスプレーヤー程稼げませんが、そんな中でも慈善活動に積極的なのは頭が下がりますし、応援したくもなります。1回戦はマナリノ / シモンというシングルスプレーヤー同士のペアを下し、2回戦もシングルスプレーヤー同士のペアの挑戦を受ける形になりました。

doublesgeek.hatenablog.com

 

このペアは非常に役割がはっきりしていて、オズワルドがサーブ、ダニエルがリターンを得意としているのですが、第2ゲームでまさかのオズワルドに2本のダブルフォルトが出てしまい、いきなりブレークを許してしまう苦しい立ち上がりでした。ダニエルもオズワルドも悪いプレーではないのですが、パワーのあるシングルスプレーヤー二人に形は作っても最後はパワーで押し切られてしまう場面が多かったように思います。結局そのブレークを返せないままサングレンのサービング・フォー・ザ・セットを迎えますが、ここでは1stサーブの入りが悪かったことに救われて土壇場でのブレークバックに成功します。

 

その後の4-5でのオズワルドのサービスゲームも、5-6でのダニエルのサービスゲームもどちらもデュースまでもつれた末の苦しいキープになり、このペアとしてはいまひとつ流れに乗り切れないままタイブレークへ突入します。しかし、タイブレークではセット終盤で何か主審と口論になっていたサングレンが集中を切らしたのか少しプレーが淡泊になり、それを逃さず早期にリードを奪うことに成功したダニエル / オズワルドが第1セットをものにした形になりました。

 

第1セットを取ったことで流れができたのか、第2セットはダニエル / オズワルドのサービスゲームの流れが良くなりました。スコアで競っていてもプレーの上では余裕があり、チャンスが来るのを虎視眈々と待っているような印象さえあったのですが、タイブレークの重要な場面でダニエルのダブルフォルト、オズワルドのボレーミス、そしてコブファーのスーパープレーが重なったことでこのタイブレークを落としてしまいます。

 

第3セットは第3ゲームのコブファーのサービスのブレークに成功。明らかにコブファーが集中を切らしたところでダニエル / オズワルドがたたみ掛け、第5ゲームのサングレンのサービスもブレークし、4-1とリードした時点で勝負ありという印象でした。

 

ダニエル / オズワルドはこれでチームとして初のグランドスラム3回戦に進出。オズワルド個人としては全豪オープン初の3回戦進出となりました。3回戦ではモンロー / ティアフォーのペアと対戦になります。

 

ちなみに前述のハイインパクトアスリートの活動で、ダニエルは賞金の10%、オズワルドは2%の寄付を表明しています。3回戦進出での獲得賞金は(ペアの一人ずつに)32,500オーストラリアドルなので、ダニエルは日本円にして約26万円、オズワルドは約5万2千円分の寄付金をこの勝利で発生させたことになります。もし3回戦を勝利し準々決勝に進出した場合、賞金額は65,000オーストラリアドルで二人が寄付する金額の合算はさらに30万円以上上乗せされる計算になります。

 

コロナで経済格差が大きく出るであろうこの御時勢で、慈善活動はさらに重要さを増すことになるでしょう。頑張る二人をこれからも応援したいと思います。

J.ペグラ vs S.ストーサー

2021年全豪オープン 女子シングルス2回戦

J.ペグラ  6-0 6-1 S.ストーサー

 

本当に久しぶりにストーサーのシングルスの試合を観ました。もしかしたら全米決勝のセリーナ・ウィリアムズとの試合以来かもしれません。もう36歳なんですね。そして同性のパートナーとの間に子供がいることも初めて知りました。

www.thetennisdaily.jp

 

昔と比べるとストーサーはバックのスライスを使うことが多くなった気がします。これは年齢的なこともあるのだろうと思いますが、元々ストーサーのテニスの中では両手打ちバックハンドはあまり機能するショットではなかったので、戦術的にもスライスを多用した方が効果が高いという判断なのではないかと思います。

 

ただ、総じてこの試合は時代の流れの速さを痛感させるものでした。ストーサーのキックサーブと言えば女子選手離れしたキック力のサーブでしたが、ストーサーより10歳若いペグラは苦も無くそれを叩き返してきました。

 

贔屓目かもしれませんが、プレーとして多彩で面白いのはストーサーの方だったと思います。ただ、ストーサー前後左右に揺さぶりをかけてもペグラはきっちりと対応して決定的なチャンスボールをストーサーになかなか与えなかった印象です。逆にペグラはニュートラルなラリーから隙をついたような強打であっと言う間にチャンスを作ってしまう展開が目立ちました。

 

第2セットではストローク戦ではチャンスが無いとみたストーサーがやや強引にネットに詰めていくプレーを見せましたが、それもペグラのパスに阻まれ万事休すといった感じでした。

 

勝ったペグラは1回戦アザレンカ、2回戦ストーサーと大御所に立て続けに勝利し、自身キャリアタイ記録となるグランドスラム3回戦進出です。地味なテニスですが非常に手堅い感じのテニスでした。3回戦ではムラデノビッチと対戦になります。

 

負けてしまったストーサーですが、昨年出た下の記事によるとまだ引退は考えていないようですね。少なくとも今年一杯はプレーをする意向のようです。生まれてきた娘のためにも、もう一花咲かせて欲しいですね。

thewest.com.au

 

ところでストーサー陣営にいた女性が何故かカタカナで「ラケット」と書かれたTシャツを着ていたのですが…あれはいったい何だったでしょうか(笑)

4年ぶりのグランドスラムの舞台へ ~ジュリアン・ノウル~

一つ前の記事で今年の全豪オープンのダブルスの優勝予想を書きましたが、今回は優勝には絡まないだろうけど応援したい選手について書きたいと思います。オーストリアのジュリアン・ノウルです。

www.atptour.com

ノウルは今年の4月で47歳になる大ベテランです。左利きの両サイド両手打ちという大変珍しいスタイルの選手で、過去にはダブルスランキング6位を記録したこともある実力者です。実は2017年にはジャパンオープンに出場する予定があったのですが、直前に怪我で欠場を表明しそれから長いことツアーから離れていました。昨年の2月にようやく復帰したものの出場したのは1大会のみ。今回のグランドスラム大会出場は2017年のUSオープン以来の4年ぶりの出場になります。

www.tennisnet.com

 

↑こちらの記事によるとノウルは引退してドイツのクラウィーツ / ミースのペアのコーチになる予定だったそうなのですが、急遽出場することになったようです。ミースが膝の怪我で欠場することになり、オーストリアに来たのにコーチとしての役割が無くなってしまったのもあるのかもしれません。

 

今大会は南アフリカのロイド・ハリスとのペアで出場します。ハリスは今年で24歳になる選手なので、ほとんど倍の年齢差があることになります。1回戦でコキナキス / キリオスという強敵との対戦となってしまうのですが、なんとか突破してくれることを祈っています。 

全豪オープン2021 男子ダブルス優勝予想

全豪オープンのドローが発表されました。開幕前はいろいろゴタゴタしましたが、ひとまず無事に開幕しました。あとは大会期間中にコロナの感染が広がらないことを祈るばかりです。

www.atptour.com

さて、ダブルスのドロー(PDF版はこちら)ですが、上位勢に関してはトップハーフには以前から組んでいたペア、ボトムハーフには新規に組み始めたペアが多くなった印象です。コロナの影響で恐らく新規に組みだしたペアは基本的にはあまり一緒に練習できていないと思うので、今年は前から継続して組んでいるペアか、新規であっても練習拠点が同じペアが上がってくると思われます。

 

トップハーフには上から順に、第1シードのカバル / ファラ、そのペアを下して前哨戦を制した第6シードのマレー/ソアレス、安定して強い第3シードのグラノイェルス / セバリョス、ディフェンディングチャンピオンで第5シードのラム / ソールズベリーが名を連ねます。

 

下位シードにも、前哨戦準優勝のシャルディ / マルタン(12シード)、地元の期待の大きいピアース / ビーナス(10シード)など存在感のあるペアがいます。シード勢同士は3回戦で初めて顔を合わせるので順当に行けばシャルディ / マルタンがマレー / ソアレス、ピアース / ビーナスがラム / ソールズベリーとそれぞれ3回戦で対戦することになります。どのペアも実力と安定感があるのでどれが勝ち上がってくるか本当にわかりません。

 

忘れてはならないのがボパンナ / マクラクランのペアです。(当初の予定ではマクラクランはクラーセンと組むことになっていましたが、クラーセンは欠場のようですね。)ボパンナは昨年の全豪では内山靖崇と組んでいたので2年続けての日本人選手とのペアです。新規のペアではありますが、ボパンナはリターンの良い選手なのでマクラクランと相性が良いのではないかと期待しています。

*追記:この記事を書いている最中に負けてしまいました(泣)

 

ボトムハーフは上から順に、第7シードのメロ / テカウ、第4シードのクールホフ / クボト、第8シードのエルベール / マウ、第2シードのメクティッチ / パビッチがいます。この内、エルベール / マウを除いた3ペアは今年から組み始めたペアになります。特に注目はメクティッチ / パビッチです。新規のペアではありますが、調べてみると練習拠点は二人ともバハマのフリーポートというところにあるようなので、オフに一緒に練習できていたのではないかと思います。前哨戦2大会を連続で制し、現在8連勝中です。強いペアになるだろうと思っていましたがこれほどとは思いませんでした。パビッチは2018年にマラックと組んでいたときも前哨戦からの連勝で全豪を制していますが、今回もそうなる可能性が十分にあります。順当に行けば準々決勝でエルベール / マウと対戦になってしまうタフドローですが、今の勢いから考えるとメクティッチ / パビッチが来そうな気がします。

 

下位シードでの注目は第9シードのドディグ / ポラセクです。前哨戦はベスト4と準優勝とまずまずの戦績です。順当に行けばこのペアは3回戦でメロ / テカウ、準々決勝でクールホフ / クボトと当たりますが、どちらもまだ結成間もないペアなので、安定しているこのペアがどちらも突破してベスト4に来そうな気がしています。

 

総じて私の予想は以下の通りです。

  • 優勝:マレー / ソアレス
  • 準優勝:メクティッチ / パビッチ
  • ベスト4:グラノイェルス / セバリョス、ドディグ / ポラセク

マレー / ソアレスの優勝予想はソアレスファンの私の願望込みです。メクティッチ / パビッチは確かに強いですが、このまま優勝だとあまりにつまらないので(笑)。マレーとソアレスはせっかく再結成したのでもう1回このチームでグランドスラムタイトルを獲るところが観たいです。

doublesgeek.hatenablog.com

マーカス・ダニエルのハイ・インパクト・アスリート

ニュージーランドのダブルスプレーヤー、マーカス・ダニエルが今季獲得の賞金額の10%を慈善団体に寄付することを表明しました。ダニエルは現在ダブルスランキング45位の選手で、昨シーズンの獲得賞金額は74,607ドル(多分アメリカドル)でした。仮に今シーズンも同じくらい彼が稼いだ場合は日本円で約77万円の寄付をすることになります。

news.tennis365.net

www.atptour.com

上述の記事によるとダニエルは自分でハイインパクト・アスリートという団体を設立したそうです。↓がその団体のホームページで、私の英語力が乏しいので自信が無いのですが、恐らくアスリート(だけでなく一般の人も参加できるみたいですが)と様々な慈善団体の橋渡し的なことをする役割をになっているのだと思います。ハイインパクト・アスリートに参加した選手は、自分の収益の何パーセントを寄付するか、その寄付をどの団体に提供するかを決められるようです。ダニエル自身は前述の通り獲得賞金の10%をThe Humane LeagueThe Clean Air Task ForceThe Good Food Instituteという3団体に寄付することを表明しています。

highimpactathletes.org

 

同サイトでダニエルが書いているブログによるとハイインパクト・アスリートは『効率的利他主義』の思想に感銘を受けたダニエルが、それをスポーツ界に持ち込めないかと考えて設立したとのこと。設立に向けてダニエルはプリンストン大学で『効率的利他主義』の講習を受けたのだそうです。

ja.wikipedia.org

ideasforgood.jp

テニス選手の、それもダブルスプレーヤーが設立した団体ということで、やはりダブルスの選手が多数参加を表明しています。ダニエルのダブルスパートナーであるオズワルドをはじめ、ソアレス、ラム、ボパンナ、クレシ、クールホフ、ミドルコープ、マクラクラン勉、ニールセン、ジレ、ブリーゲン、リンドステッド、ネスタ―(引退)らが名を連ねます。女子もサンダース、メリカ、ダブロウスキーといったダブルスの名手が参加を表明しています。

 

ただ、ダニエルが宣言した賞金額として10%の寄付というのは流石に破格の数字で、寄付をしている選手の中でもここまで高い割合を呈示している選手はいません。ダニエル自身もブログの中で

I strongly believe that those in the nonprofit world should walk the talk. I wouldn’t expect anyone to donate or pledge if I wasn’t donating or pledging myself.

 ”非営利的活動はおいては、自分で言ったことを自分で実践するべきだと考えている。もし私が何の寄付もしなかったら、誰一人寄付しようとしないだろう”(私なりの訳です。間違ってたらすいません)と述べています。ここにはダニエルの設立者としての責任感と意識の高さを感じて頭が下がる思いです。